農地の売却相談を受けたとき、不動産会社として私が最初に調べること

「使っていない農地を売却したいのですが、いくらくらいで売れますか?」

農地の売却についてご相談をいただいたとき、最初から「この地域の農地なら坪○万円くらいです」と価格だけをお伝えすることは、私はあまり適切ではないと考えています。

同じ「畑」や「田」であっても、その土地がどこにあり、どのような法規制を受け、どのような道路に接し、周辺でどのような土地利用がされているかによって、考えられる売却方法や買主候補が大きく変わるためです。

農地として農業をする方への売却を考えるのか。

隣接する土地の所有者への売却を検討するのか。

農地転用の可能性を調べたうえで、住宅用地や事業用地としての売却を検討できるのか。

あるいは、資材置場や車両置場などとして利用できる可能性があるのか。

「誰が、何のために買う可能性がある土地なのか」によって、売却の進め方も変わります。

そこで当社では、農地の売却についてご相談をいただいた場合、まず対象となる土地について調査を行い、その土地がどのような土地なのかを整理するところから始めます。

この記事では、神奈川県内で農地の売却相談を受けた際に、私が不動産会社として最初にどのようなことを調べているのかをご紹介します。

1.まずは登記情報を確認します

最初に確認するものの一つが、不動産の登記情報です。

土地の登記記録からは、所在・地番・地目・地積のほか、所有権や抵当権などの権利関係を確認できます。

法務局では、土地の登記事項証明書のほか、地図や地積測量図等の図面証明書も取得できます。

農地の売却相談では、例えば次のような点を確認します。

  • 登記上の所有者は誰か
  • 登記地目は「田」「畑」などになっているか
  • 登記上の地積はどのくらいか
  • いつ、どのような原因で所有権を取得したのか
  • 抵当権など売却に関係する権利が設定されていないか

特に相続した農地の場合には、現在相談されている方と登記上の所有者が一致しているかも重要です。

なお、登記情報だけで土地の利用可能性を判断するわけではありません。

登記上の「地目」と現在の土地の状態が必ずしも一致しているとは限らないため、後述する現地確認や行政上の調査などと組み合わせて判断していきます。

2.公図や地積測量図などから土地の形状や周囲の状況を確認します

次に、公図や地積測量図などの資料を確認します。

ここで見ているのは、単に土地の形だけではありません。

例えば、

  • どのような形をした土地なのか
  • どこが道路に接しているのか
  • 周囲にはどのような土地があるのか
  • 水路や道路が介在していないか
  • 複数の土地を一体として利用しているのか
  • 地積測量図が存在するか

などを確認します。

特に農地では、現地を見ると一枚の大きな畑に見えても、登記上は複数の筆に分かれていることがあります。

反対に、道路に接しているように見えても、詳しく調べると道路との間に別の土地や水路が存在している場合もあります。

そのため、現地を見る前の段階から、売却や将来の土地利用で問題になりそうな点がないかを資料上で確認していきます。

3.都市計画上、どのような場所にある土地なのかを調べます

農地の売却を考えるうえで、都市計画上の位置付けは非常に重要です。

例えば対象地が、

  • 市街化区域
  • 市街化調整区域
  • 非線引き都市計画区域
  • 都市計画区域外

のどこに位置するのかを確認します。

市街化区域と市街化調整区域が定められている地域では、市街化区域は市街化を促進する区域、市街化調整区域は市街化を抑制する区域として位置付けられています。

そのため、同じ農地でも、市街化区域内にあるのか、市街化調整区域内にあるのかによって、その後に確認すべき内容は大きく変わります。

ただし、私は「市街化調整区域だから売れない」といった判断を、この段階ですることはありません。

市街化調整区域であることを確認したのであれば、今度はその条件を前提として、どのような土地利用の可能性があるのか、さらに調査していきます。

4.農地としてどのような規制を受ける土地なのかを調べます

農地は、一般的な宅地などと異なり、自由に売買したり、自由に別の用途へ変更したりできるわけではありません。

農地を農地のまま売買する場合には、原則として農地法第3条による許可などの手続が必要です。また、農地を農地以外の用途に変更する「農地転用」についても、農地法による規制があります。

そのため、農地の売却相談では、

  • 農業振興地域・農用地区域との関係
  • 農地転用上の農地区分
  • 現在の土地の利用状況
  • 過去の農地転用等の経緯
  • 転用を伴う売却を検討できる土地なのか

といった事項を確認します。

特に注意したいのが、農用地区域に含まれている農地です。

農用地区域は、今後農業上の利用を図るべき土地として市町村の農業振興地域整備計画に定められた区域で、非農業的な土地利用が強く制限されています。

したがって、「現在使っていない農地だから、資材置場として売却しよう」と単純に考えられるわけではありません。

その土地にどのような農地規制がかかっているのかを確認したうえで、現実的な売却方法を考える必要があります。

5.道路・接道状況を確認します

私が農地の売却相談で特に重視しているものの一つが、道路です。

土地がどのような道路に、どのような形で接しているのかによって、利用方法や買主候補が変わる可能性があるためです。

例えば、

  • 前面道路の種類
  • 道路幅員
  • 土地が道路に接している長さ
  • 現在の出入口の位置
  • 道路と土地との高低差
  • 水路の有無
  • ガードレールや縁石などの道路構造物
  • 車両が実際に進入できるか

などを確認します。

資材置場や車両置場などの事業用地としての利用可能性を考える場合には、さらに実際の車両動線も重要です。

例えば、土地そのものには十分な広さがあったとしても、大型車両が前面道路まで進入できない、曲がり角を曲がれない、出入口を確保することが難しいといった事情があれば、想定できる利用方法が変わります。

反対に、道路条件が良ければ、それまで「ただの農地」と考えられていた土地について、別の利用可能性を検討できることもあります。

そのため私は、土地そのものだけではなく、「そこまでどうやって行くのか」も含めて確認するようにしています。

6.実際に現地へ行って確認します

資料上の調査とあわせて、可能な限り実際に現地を確認します。

地図や航空写真、インターネット上の情報は非常に便利ですが、それだけでは分からないことも少なくありません。

現地では、例えば次のような点を確認します。

  • 現在どのように利用されているか
  • 草木などの管理状況
  • 土地の高低差
  • 前面道路の状況
  • 現在の進入口
  • 水路や側溝の状況
  • 擁壁の有無
  • 電柱など土地利用に影響しそうなもの
  • 隣接地との関係
  • 周辺の土地利用
  • 車両の進入が現実的に可能か

実際に土地の前に立ってみることで、資料だけを見ていた段階では気付かなかった問題が見つかることがあります。

一方で、現地を見ることで「この土地ならこういう利用方法も考えられるのではないか」と気付くこともあります。

農地の査定では、数字だけを見るのではなく、実際の土地を見ることが重要だと私は考えています。

7.周辺の土地がどのように利用されているかを確認します

現地調査では、対象となる農地だけを見て帰るわけではありません。

周辺を見渡して、

「この地域では土地がどのように使われているのか」

という点も確認します。

例えば周囲に、

  • 住宅
  • 農地
  • 工場
  • 倉庫
  • 資材置場
  • 車両置場
  • 店舗
  • 事業所

など、どのような土地利用が存在するのかを見ます。

もちろん、「近くに資材置場があるから、この土地も資材置場にできる」という意味ではありません。

土地ごとに法令上の条件は異なるため、個別の確認が必要です。

しかし、不動産として売却を考えるのであれば、法令上「できる・できない」だけではなく、その地域にどのような土地需要がありそうなのかを考えることも重要です。

8.最終的に「誰が買う可能性がある土地なのか」を考えます

ここまで調査して、ようやく売却方法について具体的に考えていきます。

私が特に重要だと考えているのが、

「この土地を誰が買う可能性があるのか」

という視点です。

例えば、同じ農地でも、

  • 農地として利用したい農業者
  • 規模を拡大したい近隣農家
  • 隣接地と一体利用したい隣地所有者
  • 住宅用地を探している方
  • 事業用地を探している事業者
  • 資材置場を探している建設業者等
  • 車両置場を探している運送事業者等

など、土地の条件によって想定される買主は変わります。

そして、買主候補が変われば、土地に求められる条件も変わります。

例えば住宅用地として検討する場合と、大型車両を置くための土地として検討する場合とでは、道路や周辺環境を見る視点も異なります。

だからこそ、私は農地について「この辺りの農地は坪○万円だから」という考え方だけで査定するのではなく、

この土地にはどのような利用可能性があり、その場合に誰が買主になり得るのか

というところまで考えることが重要だと思っています。

9.調査結果を踏まえて売却方法と価格を検討します

ここまでの調査結果を整理したうえで、ようやく具体的な売却方法や価格を検討します。

大まかな流れとしては、

登記・図面の確認

↓

都市計画の確認

↓

農地に関する規制の確認

↓

道路・接道状況の確認

↓

現地調査

↓

周辺の土地利用・需要の確認

↓

利用可能性の検討

↓

想定される買主の検討

↓

売却方法・査定価格の検討

というイメージです。

もちろん、すべての農地について転用可能性があるわけではありません。

調査した結果、「農地として売却することを考えた方が現実的」という結論になることもあります。

反対に、所有者様自身が「農地だから売れないだろう」と思っていた土地について、調査を進めることで別の売却方法を検討できる可能性が見えてくることもあります。

大切なのは、最初から結論を決めてしまわないことだと思います。

私は、まずその土地について調べたうえで、

「この土地の場合、どのような売却方法が考えられるのか」

を一つずつ整理していくようにしています。

農地を「農地だから」で終わらせず、その土地の可能性を調べる

農地の売却では、一般的な宅地とは異なる知識が必要になる場面があります。

農地法だけではありません。

都市計画、道路、土地の形状、周辺環境、想定される土地利用など、複数の要素を確認しながら売却方法を考える必要があります。

当社では、不動産会社として土地の売却を扱うだけでなく、行政書士として農地転用をはじめとした許認可業務にも携わっています。

そのため、農地の売却についてご相談をいただいた際には、

「農地をいくらで売るか」だけではなく、「この土地にはどのような可能性があるのか」

というところから調査することを大切にしています。

神奈川県で農地の売却をお考えの方へ

「相続した農地を手放したい」

「何年も使っていない畑がある」

「他の不動産会社に相談したが、農地なので難しいと言われた」

「農地として売るべきなのか、転用して売ることができるのか分からない」

「資材置場や車両置場などの事業用地として売却できないか知りたい」

このような段階でも構いません。

農地は、場所や法規制、道路、周辺環境などによって売却方法が大きく異なります。

リバーフィールドでは、神奈川県内を中心に、農地や市街化調整区域を含む土地について、状況を確認したうえで売却方法をご提案しています。

農地の売却についてお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

※この記事は農地売却に関する一般的な考え方をご紹介するものです。実際の売買・農地転用その他の可否は、対象地の状況や関係法令、自治体の取扱い等によって異なります。

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