不動産を売買する際、必ずしも不動産会社を通す必要はありません。
例えば、親族や知人との間で土地や建物を売買する場合、隣地所有者から土地を譲ってほしいと頼まれた場合など、既に売主と買主が決まっているケースもあります。
このような場合、「不動産会社を通さずに売買できないか」「仲介手数料を節約できないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。
結論から申し上げると、不動産を個人間で直接売買することは可能です。
ただし、不動産の売買には、契約書の作成だけでなく、権利関係や法令上の制限、境界、接道状況など、事前に確認しておくべき事項が数多くあります。
本記事では、不動産の個人売買に必要な手続きや費用、注意点について解説するとともに、行政書士による契約書作成と、不動産会社による仲介の違いについてもご紹介します。
不動産は個人間でも売買できる
不動産の売買は、売主と買主が直接契約を締結することでも成立します。
不動産会社による仲介は、法律上、すべての不動産売買で義務付けられているわけではありません。
そのため、売主と買主が既に決まっている場合には、不動産会社を介さずに売買を進めることもできます。
例えば、次のようなケースです。
- 親族間で土地や建物を売買する
- 知人や友人に不動産を売却する
- 隣地所有者に土地の一部を売却する
- 借地人が地主から土地を購入する
- 長年借りている土地を所有者から買い取る
- 個人間で農地を売買する
ただし、農地の売買には農地法上の許可等が必要になる場合があり、一般的な宅地の売買とは異なる手続きが必要です。
また、売主と買主が合意していれば、必ず安全に取引できるというわけではありません。
不動産を個人売買するメリット・デメリット
メリット:仲介手数料を節約できる
不動産を個人売買する最大のメリットは、不動産会社に支払う仲介手数料を節約できることです。
不動産会社に売買の仲介を依頼した場合、仲介手数料が発生します。
例えば、売買価格が2,000万円の場合、一般的な仲介手数料の上限は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売買価格 | 2,000万円 |
| 仲介手数料(税抜) | 66万円 |
| 消費税(10%) | 6万6,000円 |
| 仲介手数料(税込) | 72万6,000円 |
※上記は一般的な速算式「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた金額です。売買価格400万円超の取引を想定しています。
売主と買主の双方が仲介手数料を支払う場合、それぞれに費用が発生します。
個人売買であれば、この仲介手数料を支払わずに取引を進めることができます。
ただし、契約書の作成や所有権移転登記などを専門家に依頼する場合は、別途費用が発生します。
デメリット:不動産の調査や契約手続きを自分たちで行う必要がある
不動産会社に仲介を依頼する場合、通常は不動産会社が物件調査を行い、重要事項説明や売買契約の手続きを進めます。
一方、個人売買では、これらの手続きを売主と買主自身で行うか、必要に応じて専門家へ個別に依頼しなければなりません。
特に注意したいのが、不動産の物件調査です。
不動産には、外観だけでは分からないさまざまな制限や問題が存在することがあります。
契約書を作成しただけでは、その不動産に問題がないことを確認したことにはなりません。
仲介手数料を節約できる反面、調査不足によるトラブルが発生する可能性がある点は理解しておく必要があります。
不動産の個人売買に必要な手続き
一般的な土地や建物の個人売買は、次のような流れで進めます。
| 手順 | 手続き | 内容 |
|---|---|---|
| STEP1 | 売買条件の合意 | 売買価格、引渡時期、支払方法などを決める |
| STEP2 | 不動産の調査 | 権利関係、法令制限、境界、接道状況などを確認する |
| STEP3 | 売買契約書の作成 | 合意内容を書面にまとめる |
| STEP4 | 売買契約の締結 | 売主・買主が契約内容を確認して契約する |
| STEP5 | 代金の支払い・引渡し | 残代金の支払いと不動産の引渡しを行う |
| STEP6 | 所有権移転登記 | 法務局で所有権移転登記を行う |
実際の取引では、契約時に手付金を支払い、後日残代金を決済する方法もあります。
また、抵当権の抹消、農地転用許可、土地の分筆などが必要な場合は、追加の手続きが発生します。
売買契約書は必ず作成するべき?
不動産売買契約は、原則として当事者間の合意によって成立するため、契約書の作成が契約成立の絶対条件というわけではありません。
しかし、不動産は高額な財産です。
口約束だけで売買すると、後日、契約内容をめぐってトラブルになるおそれがあります。
例えば、次のような事項です。
- 売買代金はいくらだったのか
- 代金はいつ支払うのか
- 不動産はいつ引き渡すのか
- 境界が不明確な場合はどうするのか
- 建物に不具合が見つかった場合はどうするのか
- 契約を解除できる条件は何か
こうしたトラブルを防ぐためにも、個人売買であっても売買契約書を作成することをおすすめします。
不動産の個人売買にかかる費用
不動産会社を通さずに売買する場合でも、売買代金以外にさまざまな費用が発生します。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| 売買契約書作成費用 | 行政書士等に契約書の作成を依頼する場合の報酬 |
| 印紙税 | 課税対象となる売買契約書を作成する場合に必要 |
| 登録免許税 | 所有権移転登記に伴う税金 |
| 司法書士報酬 | 所有権移転登記を司法書士に依頼する場合の報酬 |
| 不動産取得税 | 不動産を取得した場合に課税される税金 |
| 測量費用 | 境界確認や測量が必要な場合の費用 |
| その他 | 抵当権抹消費用、農地転用費用など |
なお、売主には売却益に応じて譲渡所得税等が発生する場合があります。
個人売買で仲介手数料を節約できたとしても、税金や登記費用まで不要になるわけではありません。
また、親族間などで時価より著しく低い価格で売買した場合には、贈与税などの税務上の問題が生じる可能性もあるため注意が必要です。
不動産の個人売買で注意したい5つのポイント
不動産の個人売買では、特に次の5つの事項を確認しておくことが重要です。
1.権利関係に問題がないか
不動産の登記事項証明書では、所有者や抵当権などの権利関係を確認できます。
例えば、売主が住宅ローンを利用して購入した不動産には、金融機関の抵当権が設定されている場合があります。
このような不動産を売買する際には、抵当権をどのように抹消するのか確認する必要があります。
また、共有名義の不動産では、誰がどの持分を所有しているのかも重要です。
2.建物の建築や再建築が可能か
土地を購入する場合、特に注意したいのが建築基準法上の道路との関係です。
原則として、建築物の敷地は建築基準法上の道路に2メートル以上接している必要があります。
この接道要件を満たしていない場合、建物の新築や建替えができない可能性があります。
また、道路に接しているように見えても、その道路が建築基準法上の道路に該当するとは限りません。
現在建物が建っている土地であっても、将来の建替えが可能とは限らないため、注意が必要です。
3.土地の境界が明確になっているか
土地の個人売買では、隣地との境界についても確認しておく必要があります。
例えば、売買後に隣地所有者から「塀が越境している」と指摘されるケースも考えられます。
境界標の有無や測量図の内容、隣地との境界確認の状況などを確認しておくことが重要です。
必要に応じて、土地家屋調査士への相談も検討しましょう。
4.法令上の利用制限がないか
不動産には、都市計画法や建築基準法などによるさまざまな制限があります。
特に注意したいのが、市街化調整区域内の不動産です。
市街化調整区域では、都市計画法により建築や開発行為などが制限されており、既存の建物があっても、誰でも自由に建替えや用途変更ができるとは限りません。
例えば、農家住宅や分家住宅などは、建築された経緯や許可条件によって、第三者が購入した後の利用が制限される場合があります。
そのため、市街化調整区域内の不動産を売買する場合には、建築された経緯や許可条件、購入後の利用目的などを事前に確認することが重要です。
5.契約不適合責任について取り決めているか
不動産売買では、引渡し後に建物の雨漏りや設備の不具合などが見つかる場合があります。
このような問題に関係するのが、契約不適合責任です。
契約不適合責任とは、引き渡された不動産が契約内容に適合していない場合に、売主が負うことのある責任です。
個人間の売買では、契約不適合責任について特約を設けることもあります。
ただし、どのような特約でも必ず有効になるわけではありません。
売主が知りながら告げなかった事実などについては、免責特約を設けても責任を免れない場合があります。
そのため、売買契約書を作成する際には、対象不動産の状況や当事者間の合意内容を踏まえて、適切に取り決めることが重要です。
売買契約書を作成するだけでは防げないリスクがある
不動産の個人売買で特に理解しておきたいのが、売買契約書の作成と、不動産の物件調査は異なる業務であるという点です。
売買契約書は、売主と買主が合意した内容を明確にするための書類です。
一方、物件調査は、売買対象となる不動産の権利関係や法令制限、接道状況などを確認する業務です。
例えば、売主と買主が「住宅を建築する目的で土地を売買する」と合意し、その内容を契約書に記載したとします。
しかし、その土地が建築できない土地であった場合、契約書を作成しただけでは問題を解決できません。
そもそも住宅を建築できる土地なのかについて、事前に調査する必要があるためです。
つまり、専門家が売買契約書を作成したとしても、その不動産の安全性や利用可能性まで保証されるわけではありません。
個人売買を行う際には、この違いを十分に理解しておくことが重要です。
不動産の個人売買は専門家に依頼できる?
不動産の個人売買では、必要な業務に応じて専門家へ依頼することができます。
主な専門家と業務内容は次のとおりです。
| 専門家 | 主な業務 |
|---|---|
| 行政書士 | 売買契約書の作成、農地転用許可申請など |
| 宅地建物取引業者 | 不動産売買の仲介、物件調査、重要事項説明など |
| 司法書士 | 所有権移転登記、抵当権抹消登記など |
| 土地家屋調査士 | 土地の測量、境界確認、分筆登記など |
| 税理士 | 不動産売買に伴う税務相談や申告など |
例えば、売主と買主が既に決まっており、契約条件についても合意している場合には、行政書士へ売買契約書の作成を依頼する方法があります。
一方、不動産の調査や契約手続き全体について専門家に関与してほしい場合には、不動産会社へ仲介を依頼する方法があります。
なお、物件調査を行うこと自体が直ちに宅建業法上の仲介に該当するわけではありません。仲介に該当するかどうかは、契約成立に向けた関与の内容など、業務の実態によって判断されます。
契約書作成のみと不動産仲介の違い
リバーフィールドでは、不動産の個人売買について、ご依頼内容に応じた対応を行っています。
主な対応方法は、行政書士による「売買契約書の作成」と、宅地建物取引業者による「不動産仲介」の2つです。
① 行政書士による売買契約書の作成
売主と買主が既に決まっており、売買条件についても合意している場合には、行政書士として売買契約書の作成を承ります。
当事者間で合意した内容や、ご提供いただいた資料などをもとに、売買契約書を作成します。
ただし、契約書作成のみをご依頼いただく場合、不動産の物件調査や売買の仲介は行いません。
具体的には、原則として次の業務は含まれません。
- 現地調査
- 登記事項や権利関係の独立した調査
- 都市計画法・建築基準法等の法令制限の調査
- 接道状況の調査
- 境界や越境の調査
- 上下水道等の設備調査
- 売買価格の妥当性の調査
- 売主・買主間の売買条件の交渉・調整
- 宅建業法に基づく重要事項説明
契約書作成に必要な事項については、ご依頼者様から資料や情報をご提供いただきます。
なお、ご提供いただいた資料に明らかな不備や疑問点がある場合などには、契約書作成に必要な範囲で確認や追加資料のお願いをすることがあります。
契約書作成のみの場合、当事務所が対象不動産の権利関係や法令制限等について独立した調査を実施するものではありません。
そのため、調査を行っていない事項について問題が存在する可能性があり、契約書を作成したことによって取引の安全性が保証されるものではありません。
この点をご理解いただいたうえで、ご依頼を承ります。
② 宅地建物取引業者による不動産仲介
不動産の権利関係や法令制限などを調査したうえで、売買契約を進めたい場合には、不動産会社として仲介を承ります。
不動産仲介では、対象物件や取引内容に応じて、必要な物件調査、重要事項説明、売買契約手続きなどに対応します。
例えば、次のようなケースです。
- 購入予定の土地に建物を建築できるか確認したい
- 市街化調整区域内の土地を売買したい
- 農地を売買したい
- 土地の境界や接道状況に不安がある
- 売主と買主は決まっているが、契約手続きは専門家に任せたい
不動産会社に仲介を依頼した場合でも、すべての問題や将来のトラブルを防げるわけではありません。
しかし、専門家による物件調査や重要事項説明を受けることで、当事者だけでは気付きにくい問題を事前に把握できる可能性があります。
売主と買主が決まっていても、不動産仲介を依頼できる
不動産仲介というと、不動産会社に買主を探してもらうサービスをイメージされる方も多いかもしれません。
しかし、売主と買主が既に決まっている場合でも、不動産会社に仲介を依頼することは可能です。
例えば、隣地所有者との間で土地の売買について合意しているものの、権利関係や法令制限の調査、契約手続きについては専門家に任せたいというケースです。
このような場合、買主を探す必要はありませんが、不動産の調査や契約手続きには専門的な知識が必要になります。
売主と買主が決まっているからといって、必ずしもすべての手続きを当事者だけで進める必要はありません。
神奈川県・東京都で不動産の個人売買をお考えの方へ
リバーフィールドでは、神奈川県および東京都を対象に、不動産の個人売買に関するご相談を承っています。
リバーフィールドでは、行政書士事務所と宅地建物取引業者の双方を運営しているため、ご依頼内容に応じて、それぞれの立場から対応することが可能です。
例えば、売主と買主が既に決まっており、売買契約書の作成だけを希望される場合には、行政書士業務として対応します。
一方、対象不動産の調査や重要事項説明を含め、売買契約の成立に向けた手続きを希望される場合には、不動産会社として仲介を行います。
また、農地転用許可や市街化調整区域に関する許認可などが必要な場合には、行政書士としての専門知識を生かした対応も可能です。
ご相談にあたって
お問い合わせの際には、次の事項をお知らせいただけますと、対応の可否や必要な業務についてご案内しやすくなります。
- 売買予定の不動産の所在地
- 土地・建物の別
- 売主と買主が既に決まっているか
- 売買価格や契約条件が決まっているか
- 契約書作成のみを希望するか、不動産仲介を希望するか
なお、個別の不動産に関する権利関係や法令制限の調査、売買契約書の内容検討などは、有料業務として承っています。
ご依頼内容を確認したうえで、対応範囲と報酬をご案内いたします。
神奈川県・東京都で不動産の個人売買をご検討の方は、リバーフィールドへお問い合わせください。
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