空き家にしない「わが家」の終活ノートとは?内容・入手・活用方法を解説

自宅や実家について、「自分が亡くなった後、この家はどうなるのだろう」「子どもに負担をかけたくない」と考えたことはありませんか。

住宅は、所有者が亡くなった後も管理や維持費が必要です。家族が住む予定がなければ、相続をきっかけに空き家となってしまうこともあります。

こうした問題を未然に防ぐために役立つのが、神奈川県居住支援協議会が作成した「空き家にしない『わが家』の終活ノート」です。

このノートは、自宅の情報や将来の希望を整理し、家族と話し合うきっかけをつくるためのものです。

この記事では、ノートの概要や入手方法、活用する際のポイントに加え、不動産と相続の実務に携わる立場から、自宅を空き家にしないために生前から準備しておきたいことを解説します。

空き家にしない「わが家」の終活ノートとは?

「空き家にしない『わが家』の終活ノート」は、神奈川県居住支援協議会が、空き家の発生を予防することを目的に作成した、住まいに重点を置いたエンディングノートです。

2019年度に国土交通省の補助事業を活用して作成され、2020年2月に発行されました。その後も法改正などを踏まえて改訂されており、2025年2月には管理不全空家等に関する制度改正などが反映されています。

神奈川県の公式ホームページでも公開されており、誰でも無料で利用できます。

一般的なエンディングノートでは、財産、医療、介護、葬儀など幅広い事項を整理しますが、このノートは特に自宅を将来どうするかという問題に焦点を当てています。

例えば、現在住んでいる自宅について、将来誰が住むのか、住む人がいなければ売却するのか、誰が管理するのかといったことを、所有者が元気なうちから考えるきっかけになります。

大切なのは、ノートを記入すること自体ではなく、記入した内容をもとに家族と話し合うことです。

一般的なエンディングノートとの違い

比較項目一般的なエンディングノートわが家の終活ノート
主な目的人生全般の希望や情報を整理自宅の将来や空き家対策を考える
対象財産・医療・介護・葬儀など主に住宅や土地
活用場面終活全般住宅の相続・管理・処分を考えるとき
家族との共有幅広い希望の共有自宅をどうするかの話し合い

神奈川県居住支援協議会でも、一般的なエンディングノートと併せて活用することを推奨しています。

なお、このノートは遺言書とは異なります。記入しただけで、不動産の相続先を法的に指定できるものではありません。

「わが家」の終活ノートはどこで入手できる?

「空き家にしない『わが家』の終活ノート」は、神奈川県の公式ホームページから無料でダウンロードできます。

PDF形式で公開されているため、自宅のプリンターなどで印刷して使用できます。

公式資料はこちらから入手できます。

神奈川県の公式ページでは、ノート全体のPDFのほか、章ごとに分割されたPDFも公開されています。また、ノートの紹介動画や書き方を解説する動画も掲載されています。

神奈川県内では、秦野市、横浜市、海老名市などの自治体でも、このノートの活用が案内されています。

例えば、秦野市では「始めてみましょう!空き家にしない『わが家』の終活ノート」というページを設け、自宅の今後について家族で話し合うことを推奨しています。

参考:秦野市公式ホームページ「始めてみましょう!空き家にしない『わが家』の終活ノート」

「わが家」の終活ノートには何を書く?

「わが家」の終活ノートには、住まいに関する情報や今後の希望を整理するための記入欄のほか、終活に関する制度や相続手続きについての解説が掲載されています。

主な構成は次のとおりです。

章内容
第1章「わが家」の終活ノートを作成してみましょう
第2章終活の参考となる制度について
第3章相続された方へ
第4章相談できる関係団体のご案内
資料編各種契約書のひな型など

ノートを活用する際には、特に次の事項を整理しておくことをおすすめします。

自宅や土地の基本情報

まず、自宅について家族が把握しておくべき情報を整理します。

  • 不動産の所在地
  • 土地や建物の所有者
  • 共有者の有無
  • 住宅ローンの有無
  • 固定資産税に関する情報

特に、土地と建物の所有者が異なる場合や、複数人の共有名義になっている場合は、相続後の手続きが複雑になることがあります。

不動産に関する書類の保管場所

不動産の売却や相続手続きを進める際には、さまざまな資料が必要になることがあります。

例えば、次のような書類です。

  • 登記識別情報通知書や登記済証
  • 売買契約書
  • 土地の測量図や境界確認書
  • 建築確認済証や検査済証
  • リフォームや修繕の履歴
  • 固定資産税の納税通知書

これらの書類は、所有者本人しか保管場所を知らないことも珍しくありません。

特に、過去の測量資料や建物の修繕履歴などは、相続人が後から探そうとしても見つからない場合があります。

書類そのものをノートに添付する必要はありませんが、どこに保管しているのかを記録しておくことが大切です。

自宅の将来についての希望

自宅について、将来どのようにしてほしいのかを整理します。

例えば、次のような希望が考えられます。

  • 配偶者に住み続けてほしい
  • 子どもの誰かに引き継いでほしい
  • 誰も住まないのであれば売却してほしい
  • 売却せずに賃貸住宅として活用してほしい

ただし、本人の希望と家族の意向が一致するとは限りません。

自宅を引き継いでほしいと考えていても、子どもはすでに別の地域で住宅を購入しており、住む予定がないという場合もあります。

そのため、希望を書くだけでなく、家族の考えも確認しておくことが重要です。

なぜ自宅の終活が必要なのか?

神奈川県では空き家が約47万戸存在する

神奈川県が公表している空き家施策の資料によると、県内の空き家は約47万戸で、全国で3番目に多い状況です。

ただし、この数字には賃貸用や売却用などの住宅も含まれており、すべてが管理されていない空き家というわけではありません。

神奈川県では、空き家の適正管理や利活用の促進に取り組んでおり、「わが家」の終活ノートも空き家の発生を予防するための取組みの一つです。

参考:神奈川県「空き家施策」

相続をきっかけに空き家になることがある

自宅に住んでいた所有者が亡くなり、相続人の誰も住まない場合、その住宅は空き家になる可能性があります。

相続人が遠方に住んでいる場合などは、管理のために現地へ通うことも負担になります。

また、相続人同士で今後の方針が決まらず、長期間そのままになってしまうケースも考えられます。

空き家になっても維持費がかかる

誰も住んでいない住宅でも、所有している限り費用や管理の負担が発生します。

項目主な内容
固定資産税・都市計画税所有している不動産に応じた税負担
草刈り・庭木の管理雑草や樹木の繁茂を防ぐための作業
建物の修繕雨漏りや外壁の破損などへの対応
火災保険空き家の状態に応じた保険の検討
解体費用建物を撤去する場合の費用

また、管理が不十分な空き家は、周辺住民への影響が生じるおそれがあります。

空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、特定空家等や管理不全空家等として行政から指導・勧告などを受ける場合もあります。

一定の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなる可能性もあるため、注意が必要です。

相続してからでは売却が難しい場合もある

住宅は、相続すれば必ず売却できるわけではありません。

例えば、次のような不動産です。

  • 接道条件を満たしておらず、再建築できない土地
  • 市街化調整区域内にある住宅
  • 隣地との境界が不明確な土地
  • 土地や建物に複雑な権利関係がある不動産

こうした不動産は、一般的な住宅と比べて売却先が限られたり、売却までに時間がかかったりすることがあります。

特に神奈川県の市街化調整区域では、住宅の建築経緯や都市計画法上の制限によって、建替えや第三者への売却後の利用に影響が生じる場合があります。

所有者が元気なうちに不動産の状況を把握しておけば、将来の相続人が対応に困るリスクを減らすことにつながります。

自宅を空き家にしないために生前からできること

家族と自宅の将来について話し合う

最初に取り組みたいのは、家族との話し合いです。

所有者本人が「子どもが引き継いでくれるだろう」と考えていても、子どもには住む意思がないかもしれません。

将来誰が住むのか、誰も住まない場合はどうするのかを確認しておくことで、相続後の判断がしやすくなります。

不動産の権利関係や利用制限を確認する

自宅を将来売却する可能性がある場合は、事前に不動産の状況を確認しておくことも有効です。

登記上の所有者、接道状況、都市計画法上の制限、建築に関する履歴などを調べることで、売却に支障となる問題がないか検討できます。

特に神奈川県内の市街化調整区域にある農家住宅や分家住宅などは、建築時の許可内容や属人的な要件によって、第三者が取得した後の利用に制約が生じることがあります。

このような住宅は、一般的な市街化区域内の住宅と同じように売却できるとは限りません。

売却・賃貸・居住継続などの選択肢を整理する

自宅の将来については、必ずしも売却が正解とは限りません。

家族が住み続ける方法、第三者へ貸す方法、売却して現金化する方法など、それぞれのメリットとデメリットを比較することが大切です。

ただし、賃貸や売却が可能かどうかは、不動産の立地や建物の状態、法令上の制限などによって異なります。

将来の選択肢を把握しておくことで、必要になったときに判断しやすくなります。

必要に応じて遺言書などの作成を検討する

ノートに自宅の希望を書いても、それだけで法的な相続関係が決まるわけではありません。

特定の相続人に自宅を引き継がせたい場合などは、遺言書の作成を検討することもあります。

また、判断能力が低下した場合の財産管理について、任意後見契約や民事信託などを検討する余地もあります。

どの方法が適しているかは、家族構成や財産の状況によって異なるため、必要に応じて専門家へ相談するとよいでしょう。

神奈川県で自宅や実家の将来についてお悩みの方へ

リバーフィールド行政書士事務所では、神奈川県を中心に、相続や不動産の生前整理、将来の空き家対策に関するご相談を承っております。

当事務所は、行政書士事務所と不動産会社の両方を運営しているため、相続に関する手続きだけでなく、不動産の売却や活用まで見据えたご提案が可能です。

特に、市街化調整区域内の住宅や、農家住宅・分家住宅、再建築が難しい土地など、法令上の制限がある不動産についても取り扱っています。

自宅や実家を将来どうするか考える際には、まず「わが家」の終活ノートを活用して、ご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。

そのうえで、不動産の売却や活用について具体的な検討が必要になった場合は、当事務所へご相談ください。

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