神奈川県の農地転用の審査基準を行政書士が解説|許可・不許可になる違い

「所有している農地を駐車場や資材置場として活用したい」

「購入予定の農地を転用して事業用地として使いたい」

このような場合、原則として農地法に基づく農地転用の手続が必要です。

しかし、農地転用は申請書を提出すれば当然に認められるものではありません。

神奈川県では農地転用の許可について具体的な審査基準を公表しており、大きく分けると、

  1. 立地基準
  2. 一般基準
  3. 転用目的ごとの個別基準

などによって審査されます。

つまり、「その農地が転用可能な場所にあるか」だけでなく、「その土地を本当にその用途に使う必要があるのか」「計画を実現できるのか」「周辺農地に影響を与えないか」まで審査されるということです。

この記事では、神奈川県で農地転用を検討している土地所有者や事業者の方に向けて、神奈川県が公表している審査基準をもとに、農地転用ではどのような点が審査されるのかを解説します。

※この記事は2026年10月時点で神奈川県が公表している情報をもとに作成しています。

神奈川県の農地転用は「立地基準」だけで決まるわけではありません

農地転用について調べていると、

「第1種農地」

「第2種農地」

「第3種農地」

といった言葉を目にすることがあります。

これは農地転用の可否を判断する「立地基準」に関係する農地区分です。

ただし、農地区分だけで農地転用の許可・不許可が決まるわけではありません。

神奈川県の審査基準では、立地基準に適合したうえで、事業実施の確実性や周辺農地への影響などの「一般基準」、さらに転用目的によっては「個別基準」にも適合する必要があります。

そのため、

「第3種農地だから必ず転用できる」

とは限りません。

反対に、第1種農地など原則として転用が認められない農地であっても、法令上定められた例外に該当すれば許可される場合があります。

農地転用の可否を判断するときは、農地区分だけを見るのではなく、土地と事業計画の両方を確認することが重要です。

最初に確認される「立地基準」とは?

農地転用では、優良な農地をできるだけ農地として残し、農業への影響が比較的小さい土地から転用するという考え方が採られています。

神奈川県では、農地をおおむね次のように区分しています。

農地区分主な考え方許可の考え方
農用地区域内農地農業振興地域整備計画で農用地として利用すべき土地原則不許可
甲種農地市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えた農地原則不許可
第1種農地おおむね10ha以上の一団の農地や土地改良事業の対象となった農地など原則不許可
第2種農地市街化が見込まれる農地や、第1種・第3種等に該当しない農地など代替地の有無などを審査
第3種農地市街地内や市街地化が著しい区域にある農地原則許可

特に重要なのが、第2種農地と第3種農地の違いです。

第3種農地

第3種農地は、市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地です。

神奈川県の審査基準では、例えば一定の公共施設等が整備された区域、鉄道駅などからおおむね300m以内の区域、住宅や事業用施設等が連たんしている区域などについて具体的な判定基準が定められています。

第3種農地については、原則として農地転用を許可するという取扱いです。

ただし、これはあくまで「立地基準」の話です。

第3種農地であっても、後述する一般基準などに適合しなければ許可されません。

第2種農地

第2種農地では、申請地以外の土地を利用しても事業目的を達成できると認められる場合、原則として許可できないという「代替性」の審査があります。

例えば資材置場への転用であれば、

「なぜこの農地でなければならないのか」

という点が問題になる可能性があります。

事業所との位置関係、道路条件、必要面積、周辺の土地利用状況などを踏まえて申請地を選定した理由を整理することが重要です。

第1種農地・甲種農地

第1種農地や甲種農地は、良好な営農条件を備えた農地として、原則として転用は認められません。

ただし、農業用施設、地域農業の振興に資する一定の施設、特別な立地条件を必要とする施設など、法令・審査基準に定められた例外に該当する場合があります。

そのため、「第1種農地=絶対に転用できない」と即断することも適切ではありません。

農用地区域内農地

市町村の農業振興地域整備計画において農用地区域に指定されている農地については、原則として転用できません。

農地転用を検討する場合には、農地区分を確認する前提として、農用地区域に入っているかどうかも確認する必要があります。

第3種農地でも許可されないことがあります

ここは農地転用を検討するうえで非常に重要です。

例えば、対象地について調査した結果、

「第3種農地なので立地基準上は原則許可」

だったとします。

これだけで農地転用ができることが確定するわけではありません。

神奈川県の審査基準では、立地基準に適合していても、

  • 転用するための資金がない
  • 事業計画に具体性がない
  • 他法令の許可を取得できる見込みがない
  • 必要な行政協議が終わっていない
  • 必要以上に広い農地を転用しようとしている
  • 周辺農地に悪影響を与える
  • 農業用水路や排水施設に支障が生じる

といった場合には、許可することができないとされています。

したがって農地転用では、

「この土地は転用できる農地か」

だけでなく、

「この事業計画で転用できるか」

まで検討する必要があります。

一般基準① 本当に事業を実施できるのか

農地転用では、申請書に「資材置場にします」「駐車場にします」と書くだけでは足りません。

実際にその計画を実現できることが求められます。

神奈川県の審査基準では、転用行為に必要な「資力及び信用」があるかが審査されます。

具体的な資金計画やその裏付けがない場合には、事業実施の確実性が認められない可能性があります。

そのため、転用工事に費用がかかる場合には、工事見積書や預金残高などによって、

「この工事を実際に行えるだけの資金がある」

ことを示す必要が生じます。

一般基準② 過去の農地転用も確認されることがあります

神奈川県の審査基準では、申請者が過去に農地転用許可を受けているにもかかわらず、計画どおり転用を完了していない場合や事業が計画どおり進んでいない場合も、資力・信用を判断するうえでの審査事項とされています。

また、申請時点で申請者が農地法違反を行っている場合についても規定されています。

したがって、別の土地で農地転用許可を受けたまま工事や完了手続が止まっている場合などには注意が必要です。

一般基準③ 農地転用以外の許認可・行政協議も重要です

農地転用だけが許可されても、実際に事業を行えなければ意味がありません。

そのため神奈川県の審査基準では、事業の実施に別の行政庁の許可・認可等が必要な場合、それらの処分を受けられる見込みがあるかについても確認されます。

さらに重要なのが、法令や条例によって行政庁との協議が義務付けられている場合です。

神奈川県の審査基準では、必要な協議については単に「協議中」であればよいのではなく、協議を終えていることを求めています。

農地転用を進める際には、農地法だけを調査するのではなく、その土地と転用目的に関係する他法令・条例も並行して確認する必要があります。

一般基準④ 転用面積は「広ければよい」わけではありません

農地転用では、転用する面積についても審査されます。

神奈川県の審査基準では、個々の事業内容、類似施設の一般的な規模、土地の形状、周辺の土地利用などを考慮して、事業目的を実現するためにその面積が本当に必要なのかを判断するとしています。

例えば、

「1,500㎡の農地を所有しているから、1,500㎡全部を駐車場にしたい」

というだけでは、その面積の必要性を説明したことにはなりません。

駐車予定の車両台数や車種、通路、旋回スペースなどから、必要な面積を具体的に説明する必要があります。

一般基準⑤ 周辺農地への影響も審査されます

農地転用は申請地だけを見て審査するものではありません。

周囲に農地が残る場合には、その農地で今後も営農を続けられるかという観点からも審査されます。

神奈川県の審査基準では、

  • 土砂の流出や崩壊などの災害
  • 農業用用排水施設への影響
  • 集団的な農地の分断
  • 周辺農地の日照・通風への影響
  • 農道、ため池などへの影響

などが挙げられています。

特に排水については、神奈川県の審査基準でも、雨水・汚水ともに周辺農業への影響が大きいため慎重に審査することが明記されています。

資材置場や駐車場への転用で砕石敷きや盛土などを行う場合には、転用後に雨水がどの方向へ流れるのかまで考えて計画する必要があります。

神奈川県では「転用目的ごとの個別基準」もあります

神奈川県の農地転用審査基準の特徴として知っておきたいのが、一般基準とは別に、転用目的ごとの具体的な個別基準が定められていることです。

例えば、

  • 自己住宅
  • 資材置場・駐車場等
  • 植林
  • 敷地拡張
  • 建売住宅・宅地造成・建築条件付売買予定地
  • 砂利等採取
  • 営農型太陽光発電

などについて、それぞれ審査項目があります。

つまり、同じ農地であっても、「何に転用するのか」によって確認すべき事項が変わるということです。

資材置場・駐車場への農地転用では何を審査される?

神奈川県で資材置場や駐車場への農地転用を検討している場合は、特に注意が必要です。

神奈川県の審査基準では、資材置場・駐車場等について、具体的な個別基準が設けられています。

主な確認事項は次のとおりです。

  1. 申請者の職業や法人の事業目的等から、その資材置場・駐車場が必要と認められること
  2. 資材の種類・量、車両の種類・台数などから必要面積が具体的に説明できること
  3. 現在使用している資材置場・駐車場等の面積・利用状況から、新たな土地が必要であること
  4. 現在の事業所等との位置関係から、申請地を選んだ理由が妥当であること
  5. 申請地への進入路が確保されていること

とされています。

これは非常に重要です。

例えば運送会社が車両置場として農地転用するのであれば、

「大型車を8台置きます」

というだけではなく、車種や台数、配置、車両の出入り、通路や旋回スペースなどを具体的に計画しておく必要があります。

資材置場であれば、何の資材を、どの程度の量、どのように配置するのかを示す必要があります。

貸資材置場・貸駐車場はさらに注意が必要です

土地所有者自身が利用するのではなく、農地を造成して第三者へ資材置場や駐車場として貸したい場合には、さらに注意が必要です。

神奈川県の第4条審査基準では、貸資材置場・貸駐車場について、土地の造成のみを目的とする可能性があることから、申請時に借受予定者が明らかであるかなど、その必要性を慎重に審査するとされています。

また、第5条の審査基準でも、貸資材置場・貸駐車場について、その事業目的が定款・登記事項証明書や申請者の職業から明らかである場合を対象として、需要の見込みなど必要性を慎重に審査するとしています。

そのため、

「とりあえず農地を造成しておいて、後から借りる人を探そう」

という計画では、農地転用上問題になる可能性があります。

「土地は転用できそう」でも「その計画では難しい」ことがあります

農地転用の相談では、

「この土地は転用できますか?」

という質問がよくあります。

しかし、実際には土地だけを見ても最終的な判断はできません。

例えば第3種農地であっても、

  • 1000㎡必要な理由を説明できない
  • 工事費を支払えることを確認できない
  • 進入路を確保できない
  • 排水計画に問題がある
  • 他法令上その事業を実施できない

といった事情があれば、計画をそのまま進めることが難しい場合があります。

したがって農地転用を検討するときは、

「土地の転用可能性」+「事業計画の実現可能性」

の2つをセットで考えることが重要です。

市街化調整区域では農地法だけを見ないことが重要です

神奈川県で農地転用の相談を受ける土地には、市街化調整区域内の農地も少なくありません。

ここで注意したいのが、

「農地転用できる=その土地で希望する事業ができる」

ではないことです。

例えば建築物の建築を伴う計画であれば、都市計画法上の開発許可等の検討が必要になる場合があります。

一方、資材置場や駐車場として利用するための造成については、建築物の建築や特定工作物の建設を目的とする区画形質の変更に該当しなければ、都市計画法上の「開発行為」には該当しない場合があります。もっとも、土地の所在地や工事内容によって別の法令・条例の確認が必要になることがあります。

農地転用の申請をする前に、農地法と他法令の両方から事業が実現可能かを確認することが重要です。

農地転用を検討するときは何から調べればよい?

農地転用を検討している場合、いきなり申請書を作るのではなく、まず土地について調査することをおすすめします。

実務上は、おおむね次のような事項を順番に確認していきます。

  1. 対象地が農地法上の「農地」に該当するか
  2. 市街化区域・市街化調整区域のどちらにあるか
  3. 農用地区域に含まれているか
  4. 第1種・第2種・第3種農地等のどの農地区分に該当するか
  5. 予定している転用目的
  6. その目的で必要となる面積
  7. 道路・進入路の状況
  8. 造成・雨水排水計画
  9. 周辺農地への影響
  10. 都市計画法その他の法令・条例による規制
  11. 工事費・資金計画
  12. 事業を実際に開始できる時期

特に資材置場や車両置場などの事業用地への転用では、土地を購入・賃借してから「転用できなかった」となることを避けるため、契約前の調査が重要です。

農地法第4条と第5条の違い

農地転用には、大きく農地法第4条と第5条があります。

農地法第4条

農地所有者自身が、自分の農地を農地以外の用途に転用する場合です。

農地法第5条

売買や賃貸借などによる権利移転・権利設定を伴って、農地を農地以外の用途に転用する場合です。

例えば、農地所有者が自分で駐車場として利用する場合と、運送会社に貸して車両置場として利用してもらう場合では、手続の考え方が異なります。

市街化区域では原則として「許可」ではなく「届出」です

ここまで解説してきた審査基準は、主として農地転用の「許可」に関するものです。

市街化区域内の農地については、原則として農業委員会への届出によって転用することになります。

一方、市街化区域外の農地については原則として許可が必要です。

神奈川県では県知事が許可権者となるのが基本ですが、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市については各市長が許可権者となっています。

そのため、同じ神奈川県内でも土地の所在地によって申請先や運用を確認する必要があります。

神奈川県の農地転用の審査基準は公開されています

神奈川県では、農地法第4条・第5条について詳細な審査基準を公開しています。

この記事では分かりやすさを優先して重要な部分を抜粋して解説していますが、実際の審査基準はさらに細かく定められています。

現在掲載されている審査基準は、2024年8月1日以降に農業委員会が収受した申請から適用されているものです。

本神奈川県の審査基準が適用される市区町村

神奈川県知事の農地転用許可に係る審査基準は、平塚市・鎌倉市・藤沢市・小田原市・茅ヶ崎市・逗子市・三浦市・秦野市・厚木市・大和市・伊勢原市・海老名市・座間市・南足柄市・綾瀬市・葉山町・寒川町・大磯町・二宮町・中井町・大井町・松田町・山北町・開成町・箱根町・真鶴町・湯河原町・愛川町・清川村の農地転用許可申請に関係します。

なお、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市については各市長が許可権者となるため、それぞれの市の審査基準・取扱いを確認する必要があります。

農地転用は「農地区分を調べて終わり」ではありません

農地転用というと、

「第何種農地なのか」

という点に注目されがちです。

もちろん農地区分は非常に重要ですが、それだけでは農地転用の可否は判断できません。

実際には、

農地区分 → 転用目的 → 必要面積 → 事業の必要性 → 資金計画 → 造成・排水 → 周辺農地への影響 → 道路・進入路 → 他法令

といった事項を一つずつ確認していく必要があります。

特に神奈川県の審査基準では、資材置場・駐車場についてかなり具体的な審査項目が定められています。

農地を購入してから、あるいは事業計画を固めてから農地転用が難しいことが判明すると、計画全体を見直さなければならないこともあります。

そのため、農地を事業用地として利用したい場合には、できるだけ早い段階で転用可能性と事業計画を確認することをおすすめします。

神奈川県で農地転用を検討されている方へ

リバーフィールド行政書士事務所では、神奈川県内の農地転用について、農地区分の確認から、資材置場・車両置場などの事業計画の検討、農業委員会その他の行政機関との協議、農地転用許可申請まで対応しています。

また、当事務所では不動産会社も運営しているため、農地を売却したい方や、農地を転用して事業用地として利用したい方について、農地法上の手続だけでなく不動産利用の観点も含めてご相談いただけます。

「所有している農地は転用できるのか」

「購入を検討している土地を資材置場として使えるのか」

「農地を売却したいが、農地のまま売るべきか、転用を検討できるのか」

といった段階からご相談いただけます。

なお、農地転用の可否は、土地の所在地、農地区分、周辺状況、転用目的、事業計画などによって異なります。

一般的な制度や方向性についてのご相談と、特定の土地について農地区分・関係法令・転用可能性などを調査する業務は内容が異なりますので、個別具体的な調査をご希望の場合にはお問い合わせください。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!